雨が降る日は誰か死ぬ
目と鼻の先で、無表情で光のない冷たい目が、桜を見つめている。




「ひゃぁあっ」


驚いたなんてもんじゃない。


どう見たって生きている人間じゃないのだ。


たった今、お姉ちゃんに送られて来たメールに書いてあった青紫色の身体の幽霊に違いない。



そのまま後ろに仰け反った桜は、バランスを崩して水の中に尻餅をついた。



また水の中に沈んだのと、恐ろしいモノを見たのとで、パニックを起こしてしまった桜は、もう何が何だか訳が分からない。


慌てふためきながら、何とか水面に顔を出すと、思い切り大きく口を開けて、夢中で新鮮な空気を吸った。

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