雨が降る日は誰か死ぬ
こんなことは間違っていると思う。

でも、幸兄ちゃんのいうことも分かるのだ。


確かに12人の命で、多くの人が救われるなら、その死は決してムダになるものではない。



「いいな健作。誰にも言うんじゃないぞ」


幸兄ちゃんに真顔で言われて、健作は黙って頷いた。


「いったん帰ろう。送っていく。そして今夜迎えに行くから、あの子を奉納するのを手伝え」


幸兄ちゃんはそう言って、小屋の扉の方に目配せする。


さっき隙間から見た、手足を縛られ、猿ぐつわをかまされて転がされている少女が、健作に気づいて助けを求めてきたときの少女の目を思い出し、健作の胸が痛んだ。

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