星に願いを。
変わりたい。
女の子は、“みんな一緒”が大好きだ。
同じような髪型。
同じような香り。
同じような話し方。
同じような持ち物。
...少しでも浮いてしまうと地獄を味わう事になる。
だから私は、今日も自分を作る。
作って、作って、作り固めて、今日も学校へ行く。
「絢奈、早く更衣室行こーよっ!」
「あ、今行くー」
とくに体育の前の更衣室は、女の戦いだと思う。
だって、一発で誰がダサくて、誰がオシャレかが分かってしまう。
「てかさあー、3組の大石麻衣って子知ってる?」
今日も、ほら。また始まる。
「あの子さ、なーんかウザいんだよねー。なんか、雰囲気とか?♪」
学年でもよく目立っている篠崎梨香が言い出した。
梨香は、やっぱり可愛くて、オシャレで、成績もできて、運動も出来る。そして何より、この人を引き付けるオーラが目立つ理由だろう。
「ね、絢奈。絢奈さ、大石と同中でしょ?ウザくない?」
突然話を振られて驚く。
「あー・・・。うんー。あたしも嫌いかなー。」
「でしょー?」
実を言うと、大石麻衣のことなんて全然知らない。確かに同中だけど、話したこともほとんどないし、性格もよく知らない。
だけど、梨香の意見を否定するつもりはない。
だって、地獄を見たくないから。
あたし、倉本絢奈は嘘のかたまりだ。
あたしは、学年でも目立つ女の子として生活している。だけど、この学校での
【可愛くて、オシャレで、面白くて、明るい倉本絢奈】
は作られたものだ。
「わー、絢奈、香水変えた?」
制服から体育着に着替えていると、隣で着替えていた沙耶夏が興奮気味で言ってきた。
「そー!健太に買ってもらった!」
「いいなあー。健太くん。美奈の彼氏なんて何にも買ってくれないよぉ」
「え、てか美奈の彼氏って今誰?」
梨香が髪を2つに結びながら言う。
「えぇー、1組の智樹だよぉ」
「あー。また変わったんだー」
「だってぇ、なんか元カレ、私服が嫌いだったんだもーん」
「何それ、美奈うぜぇー。」
「もぉー!」
梨香、美奈、沙耶夏、そして、あたし絢奈。
あたしたち4人は、自分達が他の女子より可愛いことも、オシャレなことも、目立つことも知っている。
てか、高校生のときって、こういう一部の人しか目立つ事が許されない。
更衣室の25個のロッカーのうち、8個はあたし達4人が占領している。
クラスの女子はあたし達以外に18人だから何人かはあたし達のせいでロッカーを使えていない。
たぶんあたし以外の3人も、このことに気づいてるけど、何も言わない。
これが【目立つ子の特権】だ。って思う。