lave letter for YOU
次に大樹の手を握ったのは、あの日の夜中だったね。

夜中に大樹のお母さんから電話があって、寝間着なのも構わずに家を飛び出してた。

サンダルを履くのも煩わしくて、無我夢中で走ってた。

何度も信号無視をして、轢かれそうになりながらも君のもとへ走った。

病室の扉を開けるとき、妙にドキドキして

もしかしたらあの電話は夢だったのかも

間違い電話だったかもしれない。

この扉を開いたら大樹はいつものように眠っているだけかもしれない。

そっと扉を開くと、お医者さんが申し訳なさそうに大樹の前に座っていて

大樹のお父さんは何度もお医者さんに頭を下げていて

大樹のお母さんは大樹の頭を優しく撫でていた。




大樹はただ目を閉じていただけ。




そう、閉じていただけ。

やっぱり大樹は死なないんだって思おうとした。

あの状況を見てもそう思おうとした。

大樹の手にそっと触れるといつもより体温は低かったけど、火照った私には心地よかった。

私に気付いたご両親は、そっと部屋から出て行ってくれた。

残されたのは私と大樹だけ。

ここまでくれば馬鹿な私だってわかる。




大樹はもう死ぬんだって。

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