桜の咲く季節に
気付かれないように、そっと視線を右隣に向ける。
出席番号順に並んでいる時にだけ立てるこの位置。
最初は前後を男子に挟まれてしまってやりにくいなと思っていたけれど、今はそんなこと思わない。
むしろ感謝しているくらいだ。
皆が歌っている中、静かに目を閉じている彼を盗み見た。
もしかして寝てる?
立っているからそんなことはないだろうけど、ちょっとあからさまじゃないだろうか。
今日が最後なのに──そう思って気付いた。
私だって歌っていないし、ましてや感極まって泣いてもいない。
人のこと言えないなと思い、自嘲気味に笑う。
その時彼の目が開いた。
急いでそらしたけど、見られたかもしれない。
校歌は間奏に入っていた。
「何?」
高すぎもせず、低すぎもないちょうど良い感じの声がした。
周りに気を使ってか小声だ。
やっぱり気付かれていたか。
少し気まずさを感じながら今度は顔ごと右を向いた。
「ちょっとあからさまだなと思って」
彼に合わせて小声で言った。
出席番号順に並んでいる時にだけ立てるこの位置。
最初は前後を男子に挟まれてしまってやりにくいなと思っていたけれど、今はそんなこと思わない。
むしろ感謝しているくらいだ。
皆が歌っている中、静かに目を閉じている彼を盗み見た。
もしかして寝てる?
立っているからそんなことはないだろうけど、ちょっとあからさまじゃないだろうか。
今日が最後なのに──そう思って気付いた。
私だって歌っていないし、ましてや感極まって泣いてもいない。
人のこと言えないなと思い、自嘲気味に笑う。
その時彼の目が開いた。
急いでそらしたけど、見られたかもしれない。
校歌は間奏に入っていた。
「何?」
高すぎもせず、低すぎもないちょうど良い感じの声がした。
周りに気を使ってか小声だ。
やっぱり気付かれていたか。
少し気まずさを感じながら今度は顔ごと右を向いた。
「ちょっとあからさまだなと思って」
彼に合わせて小声で言った。