眠れる森の
眠っている郁都は大人の男だ。
中学生とは思えない。
もともと高かった身長は170をこえたという。
小さいころとは違う雄の匂いに胸が苦しくなる。
高校のころ、あの雪の日の後、あさひは同級生と初体験をすませた。
何かを隠すように。
ぐるぐるまきにされたマフラーから匂ってきた雄の匂いに動揺した。
マーキングされたような。
それを消したかった。

参考書やノートの散らばった机にかわいらしい小さなメモをみつけた。
「ノートありがとう。今度メルアド教えて。」

『汚い字』
とっさに浮かんだ汚い感情はなんなんだろう。
眠っているなら静かに出て行こうと思ったのに、動揺して机の上の小物を落としてしまった。
その音に郁都の目がうっすらあいた。

「あさひ・・・・・?」
「ゴメン。ご飯できるまで寝てていいよ。」
「タバコ・・・・?」
「禁煙なのに、大学で吸うやつがいるから。匂う?」

郁都は大学での話をすると表情が硬くなる。
しまったと思った。
部屋を出ようとした瞬間に。
捕まった。




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