こっち、向いて?【短編】
5
…あれ?
いつの間に
寝ていたんだろう?
女の子…いや、
怜奈と目が合った。
怜奈も、丁度目を覚まして
はっ、と 小さい声を上げて
布団から出た。
かばんを持って、
部屋を出る。
今 考えれば、不思議だ。
まるで何事も
なかったかのようだった。
いきなり振り向いて、
「流(りゅう)くんが、
やったの?」
項垂(うなだ)れるように
頷(うなず)いた。
怜奈の目は…
何か言いたげな、悲しそうな
もう、色んなものを
放り込んだような
…そんな、不思議な
目をしていた。