それでも、愛していいですか。
残酷な優しさ
もうすぐお盆という時期に、奈緒の元に加菜からメールが届いた。
小さな広告会社に就職が決まったらしい。
加菜の就職が決まったことは嬉しかったが、進路が未定な自分はどんどん取り残されるような気がして、気だけがやたらと焦った。
同じ頃、孝太郎の元にも同じようなメールが届き。
『よかったね、おめでとう』
と孝太郎が返信すると、加菜から『就職祝のお食事会やって♪』というかわいらしいメールが届いたので、孝太郎は快諾した。
数日後。
約束した店に一足先に着いた孝太郎は、椅子に深く座り背もたれに身を預けてぼんやりとテーブルを見つめていた。
「孝太郎くん」
目の前に、首を傾げてのぞき込んでいる加菜の顔があった。
「あ、ああ。加菜ちゃん」
「なにか考えごとしてた?」
「ううん。本当になにも考えてなかった」
そう言うと孝太郎は、にこっと笑った。