それでも、愛していいですか。

「ん?なあに?」

「なんでもないよ。じっくり選んで」

今、目の前にある加菜の笑顔に少し癒された。

「このプチコースにしてもいい?」

加菜は孝太郎にメニューを見せ、指し示す。

孝太郎は「いいよ」と言ってにっこり笑うと、店員を呼び、加菜が選んだメニューを二人分頼んだ。

店員が去っていくと。

「本当にありがとう。あたしのわがままにつき合ってくれて」

と言って、加菜は姿勢を正した。

「ううん、全然。それより、よかったね就職。おめでとう」

「ありがとう。ほんと、ほっとした」

そう言うと加菜は、ふぅとため息をつき。

「これで奈緒の就職も無事に決まってくれれば、言うことないんだけどね」

「あいつ……公務員一本で、けっこう危ない橋渡ってるもんね」

「うん……」

加菜は黙ったまま視線を落としている。

「まあ、でも、今あいつの心配しても仕方ないからさ。今日は加菜ちゃんのお祝会でしょ?」

そう言うと、幸太郎は加菜に顔を近づけ、目をしっかり見つめた。

「う、うん……」

加菜はその真っ直ぐな視線を受け止められず、視線を泳がせた。
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