それでも、愛していいですか。
扉の向こう側
遅く起きた休みの日の朝、阿久津は浴室にいた。
少し温めのシャワーを、何度も髪をかき上げながら浴びる。
締まった身体から滴る湯は、排水溝へと吸い込まれていく。
顔を両手で拭うと、蛇口を閉め、バスタオルでざっくりと頭を拭いた。
上半身裸のまま、バスタオルを肩にかけリビングに戻ると、テーブルの上に置かれた眼鏡は手に取らず、キッチンへ行き、冷蔵庫から牛乳を取り出した。
ガラスのコップになみなみと注ぐ。
牛乳を流し込むと、食パンを袋から一枚取り出して、ぽいっとトースターに放り込んだ。
コップを片手にダイニングの椅子に腰掛けて、テレビをつける。
地元の情報番組のリポーターが、賑やかしくしゃべっている。
特に見たいわけでもなかったが、とりあえず音があればなんでも良かった。
トースターが出来あがりの合図を告げると、キッチンへ戻り、焼きあがった食パンを爪でつまむようにして、皿に載せた。
マーガリンを大雑把に塗って、ダイニングへ戻る。
なにも考えず、ただ黙々と口を動かした。
その時、チャイムが鳴った。