それでも、愛していいですか。

扉の向こう側




遅く起きた休みの日の朝、阿久津は浴室にいた。

少し温めのシャワーを、何度も髪をかき上げながら浴びる。

締まった身体から滴る湯は、排水溝へと吸い込まれていく。

顔を両手で拭うと、蛇口を閉め、バスタオルでざっくりと頭を拭いた。

上半身裸のまま、バスタオルを肩にかけリビングに戻ると、テーブルの上に置かれた眼鏡は手に取らず、キッチンへ行き、冷蔵庫から牛乳を取り出した。

ガラスのコップになみなみと注ぐ。

牛乳を流し込むと、食パンを袋から一枚取り出して、ぽいっとトースターに放り込んだ。

コップを片手にダイニングの椅子に腰掛けて、テレビをつける。

地元の情報番組のリポーターが、賑やかしくしゃべっている。

特に見たいわけでもなかったが、とりあえず音があればなんでも良かった。

トースターが出来あがりの合図を告げると、キッチンへ戻り、焼きあがった食パンを爪でつまむようにして、皿に載せた。

マーガリンを大雑把に塗って、ダイニングへ戻る。

なにも考えず、ただ黙々と口を動かした。

その時、チャイムが鳴った。

< 113 / 303 >

この作品をシェア

pagetop