それでも、愛していいですか。
阿久津は重い腰を上げ、インターホンの画面に美咲が映っているのを確認すると、通話ボタンを押した。
「おはよう。私」
「どうぞ」
阿久津は、マンションの入口の鍵を解除し、インターホンの画面から美咲が消えるのを見届けた。
Tシャツを着て、眼鏡をかける。
しばらくすると、玄関のチャイムが鳴った。
玄関の戸を開けると、花束を持った美咲が立っていた。
「おはよう。涼介さん」
「おはよう」
「シャワー浴びてたの?」
阿久津の濡れた髪を見る。
「ああ」
美咲は「お邪魔します」と言って、ヒールの高いサンダルを脱いだ。
慣れた様子でリビングへ向かうと、リビングとつながっている和室に入った。
そこには、小さな仏壇があった。
「お盆はお店が忙しくて来れないから」
そう言って、美咲は持ってきた花束を仏壇に供えると、正座をして静かに手を合わせた。
その様子を阿久津は黙って眺める。
「すまないな」
「ううん、そんな。だってお姉ちゃんだよ」
美咲は仏壇に立てかけてある笑顔を向けている由美の写真を見つめた。