それでも、愛していいですか。

ダメな私




季節は流れ、9月に突入すると、朝晩の空気にはすっかり秋を感じるようになり、セミの鳴き声も、アブラゼミからツクツクボウシに変わっていた。

とりあえず、受験できる試験には全てエントリーしていたので、9月の日曜は毎週どこかの試験会場で悪戦苦闘していた。

最初の試験こそかなり緊張したが、回を重ねるにつれ試験に慣れていき。

手応えを感じたものもあれば、間違いなく不合格だと感じたものもあった。

試験に費やした9月はあっという間に過ぎていき、長かった夏休みはとうとう終わりを告げ、後期課程に突入した頃。

「そ、そうなんだ」

加菜の唐突な告白に、次の言葉がうまく出てこなかった。

孝太郎に告白した、という打ち明け話に胸がずきんとしたからだ。

「奈緒にはちゃんと言わなくちゃって思ってたんだけど……試験が終わってからの方がいいかなって思って……」

そう言うと、加菜はうつむき、黙った。

< 118 / 303 >

この作品をシェア

pagetop