それでも、愛していいですか。
君島准教授の秘密
アルバイトが終わる午後10時15分まで、君島は店内で待っていた。
「できるだけ早く帰してあげてくださいね」
マスターは君島に釘を刺した。
「大丈夫ですよ。さ、行こうか」
君島に促されるまま喫茶店を出ると、タクシーが一台止まっていた。
「さ、乗って乗って」
言われるがまま君島が手配したタクシーの後部座席に乗り込む。
その隣りに君島も乗り込んだ。
「A町3丁目まで行ってもらえる?」
身を乗り出して運転手にそう告げると、君島は背もたれに身を預けた。
A町3丁目と言えば、この辺りきっての繁華街だ。
一体どこに連れて行かれるのだろうと少し不安になり、すぐ隣りに座っている君島をちらりと見た。
その横顔は相変わらず端整だったが、喫茶店にいる時のリラックスした表情とは少し違っていて。