それでも、愛していいですか。
どういうこと?
私は君島先生と飲んでいたはずなのに、どうして阿久津先生の家に泊まっていたの?
それに阿久津先生の家にベビーグッズって……。
突然頭に入ってきた情報が重大すぎて、頭の痛みが増した。
深呼吸を二度ほどしてトイレの扉を開け、そろりそろりとリビングへ行くと、眼鏡をかけたいつもの阿久津がいた。
「あの……」
冷蔵庫をのぞいている阿久津の背中に声をかける。
「なんですか」
「私は、どうしてここに……?」
その言葉を聞いて、阿久津は向き直った。
「覚えてないんですか?」
「……はい。あの……なにか、あったんですか?」
そう尋ねられた阿久津は窓の外を見やりながら。
「君島先生に呼び出されて、あなたを迎えに行きました」
「え?」
絶句してしまった。
「あなたが泥酔しているので助けてほしい、と」
自分の顔が赤くなるのがわかった。
記憶のない自分がなにをしでかしたのか、たまらなく不安になった。
「それで……」
「眠ってしまっていたので、申し訳なかったのですが……ここへ連れてきました」
そう言うと阿久津は、洗いざらしの髪をかき上げた。