それでも、愛していいですか。

「ありがとう」

阿久津が背後から声をかけた。

「い、いえ……。それより、私は……謝らなくちゃいけない」

「昨日のことはもう別になんとも思っていません」

「昨日のことじゃなくて……」

阿久津は首を傾げた。

次の言葉をなかなか言えずにいると、阿久津は「朝ご飯を食べましょう」とダイニングテーブルへ促した。

「……私、ここで朝食、食べられません」

「なぜ?」

奈緒は、仏壇の方にそっと目をやった。

阿久津は察したのか、穏やかに「かまいません」とだけ言い、奈緒に座るよう促した。

奈緒は少し悩みつつも素直に従った。

阿久津はハムエッグとトーストを手際よくテーブルの上に並べた。

向かい合って座ると、「食べましょう」と淡々と言って阿久津は手を合わせた。

< 151 / 303 >

この作品をシェア

pagetop