それでも、愛していいですか。
「ありがとう」
阿久津が背後から声をかけた。
「い、いえ……。それより、私は……謝らなくちゃいけない」
「昨日のことはもう別になんとも思っていません」
「昨日のことじゃなくて……」
阿久津は首を傾げた。
次の言葉をなかなか言えずにいると、阿久津は「朝ご飯を食べましょう」とダイニングテーブルへ促した。
「……私、ここで朝食、食べられません」
「なぜ?」
奈緒は、仏壇の方にそっと目をやった。
阿久津は察したのか、穏やかに「かまいません」とだけ言い、奈緒に座るよう促した。
奈緒は少し悩みつつも素直に従った。
阿久津はハムエッグとトーストを手際よくテーブルの上に並べた。
向かい合って座ると、「食べましょう」と淡々と言って阿久津は手を合わせた。