それでも、愛していいですか。
奈緒は申し訳ない気持ちを拭い去れないまま、遠慮がちにテーブルに並べられた朝食を眺めた。
自分のために作られた阿久津の手料理と、阿久津と向かい合っているこの状況が信じられない。
奈緒は、阿久津の作ったハムエッグを一口食べた。
「おいしい」
つい顔がほころんだ。
それを見た阿久津はほっとした顔で「よかった」と言った。
こんなに優しくて穏やかな表情を初めて見て、胸がきゅっとした。
「人になにかを作るなんて久しぶりでしたから、緊張していました」
その言葉を聞いて思わず、かわいい、と思ってしまった。
「先生も緊張することあるんですか?」
「もちろんあります」
そう言うと阿久津はぎこちなくにやりとした。
「いつも冷静に見えますよ?」
「緊張もしますし、動揺もします」