それでも、愛していいですか。
「先生」
「はい」
朝食を食べ終えた奈緒は、姿勢を正し。
「私、公務員試験、ダメでした」
「そのようですね」
意を決して報告したのに、あまりにあっさりとした答えに納得がいかなかった。
「なんで知ってるんですか?」
「昨日、うわ言のように言っていましたから」
「そう、ですか」
それを聞いて恥ずかしくなった。
「どうするんですか、これから」
阿久津の穏やかな問いに、即答できなかった。
そう。これからのことを考えなければならない。
試験に落ちたショックにいつまでも打ちひしがれているわけにはいかない。
が、どうすればいいのだろう。
……自分は、どうしたいのだろう。
ふと、大学受験の頃を思い出した。
本当は介護の勉強がしたかったのに、受験科目だけでなんとなく受けた法律学科を選んでしまったこと。
母に「介護は大変よ」と反対され、それを押し切ってまで親に学費を出してもらうほどの情熱が、あの時の自分にはなかったこと。
いつも、親の言うことをちゃんと聞いてきた。
自分に自信がなかったから。