それでも、愛していいですか。
「……考え中です」
「そうですか。……試験に失敗したことはショックでしょうが、あまり思いつめずに。とにかく、なんでも気軽に相談してください。できることはしますから」
担当の先生として、当たり前のことを言っているだけだとわかっていても、阿久津にそう言われると嬉しかった。
その真剣で優しい口調から、自分のことを本当に心配してくれていると感じられた。
「ありがとうございます」
奈緒は深々と頭を下げた。
「気をつけて帰ってください」
靴を履いている奈緒の頭の上から阿久津がそう言うと、奈緒は身体を起こし、「すみませんでした、ありがとうございました」と言って丁寧に頭を下げた。
マンションの外へ出ると、奈緒が時々立ち寄る例の公園が目の前にあった。
まさか、このマンションに住んでいたとは。
いつしか見上げたように、マンションを仰いだ。
こんなに近くにいるのに。
私には、なにも、できない。
なにも。