それでも、愛していいですか。

慣れた道を歩いて、アパートに帰ると、これから出かけようとする孝太郎にばったり会った。

「あ」

ふいに朝帰りを目撃され、恥ずかしくなり、思わず孝太郎から目をそらせてしまった。

「よお」

「お出かけ?」

「まあね。そっちは?」

朝帰りです、とは言いづらく。

「ん……ちょっとね」

「ふぅん」

おそらく孝太郎も朝帰りを察したのだろうが、それ以上は突っ込んでこなかった。

「じゃあな」

孝太郎は奈緒の横をすり抜け、軽く片手を上げ地下鉄の駅の方へ歩いて行った。

彼のあっさりとした態度に一抹の寂しさを覚えながら、歩を進めようとした時。

「なあ!」

後ろから、呼び止められた。

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