それでも、愛していいですか。
奈緒は少し考えて、正直に今の思いを告げた。
「介護の専門学校の資料を取り寄せました」
「そうですか」
阿久津は前を向いたまま頷いている。
「でも……親にはちょっと言いづらいです」
「どうしてですか?」
「……母は介護の仕事にはあまりいいイメージがないみたいで」
奈緒が持っていたイチョウの葉は、手の中で揉まれて形が崩れてしまっていた。
「なるほど」
阿久津は穏やかな口調でそう言った。
「人の世話をするというのは、大変なことです。多分、娘にそんな大変な思いをさせたくないんじゃないでしょうか」
それは自分にはない考え方だった。
「そうなんでしょうか」
地面を見たままそう呟くと、
「子供にはできるだけ苦労はしてもらいたくないと、親なら思うものだと思いますよ」
と諭すように言った。