それでも、愛していいですか。
孝太郎と加菜に手を振って別れたあと、奈緒は一人アパートへの道を歩いていた。
住宅街の道に人通りはほとんどなく、時折、車が奈緒のすぐ横を通りすぎていく。
『実は、奈緒のことを狙って同じアパートにしたんじゃない?』
さっきの加菜の言葉が、頭の片隅にひっかかっていた。
まさか。
まさか、そんなはずはないだろう。
孝太郎がそんな素振りを見せたことはなかったし、実際、年上の女性とつき合っていたようだし。
それにしても、孝太郎が年上の女性とつき合っていたのは意外だった。
高校時代、孝太郎目当てにグラウンドを眺めていたのは後輩ばかりだったから、彼女はおそらく年下だろう、というイメージが勝手にできていた。
幼なじみはいつの間にか、自分よりはるかに大人になってしまっていたようだ。
それが少しショックだった。
親友も恋に積極的で、それなりに経験もあって。
なんだか。
自分だけがずいぶん子供のようだ。
そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にか完全に車道を歩いていたようで。