それでも、愛していいですか。
食事を終えた奈緒は、バッグから携帯を取り出そうとしていた。
バッグの中をかき混ぜて探してみるが、見当たらない。
「あれ……」
「どうしたの?」
「携帯がない」
「うそ!」
加菜は思わず大きな声を出してしまった。
「服のポケットには入ってないの?」
そう言われて、ポケットを探ってみたがやはり見つからない。
朝は、ちゃんとあったのだ。
その後ゼミに出席して……あ。そうだ。
ゼミの途中でマナーモードになっていなかったことに気づいて、携帯をバッグから取り出したのだ。
「研究室だ」
奈緒がそう言うと、加菜はにやりと笑い。
「いってらっしゃい」
「え?」
「ここで一緒について行くほど、あたしも野暮じゃないよ?ささ、いってらっしゃ~い」
加菜はにやにやしながら早く研究室へ行くよう急かし、奈緒は追い出されるように学食を後にした。