それでも、愛していいですか。
「俺は……笑ってたよ。とても幸せそうに」
マグカップに視線を落としたまま、固まっている。
「俺は……今まで、なにをしていたんだろう」
そう言うと、阿久津はマグカップを握り締め、肩を震わせた。
奈緒はたまらなくなって、マグカップをテーブルの上に置くと、阿久津の肩にそっと手を乗せた。
震えが手を伝ってくる。
奈緒は何度も何度も優しく肩を撫でた。
それしか、方法がわからなかった。
すると、突然、阿久津は覆い被さるように奈緒をぎゅっと抱きしめた。
広い胸の中に収まってしまった奈緒は、あまりの突然の出来事に息をするのすら忘れた。
「ごめん……」
阿久津は奈緒を抱きしめたまま、呟いた。
ごめん、って……。
……どうして謝るの?
奈緒は静かに首を横に振った。
「今日だけ、今夜だけ……そばにいてくれないか」
耳元で懇願するように囁く。