それでも、愛していいですか。
頬を包んでいる阿久津の手に、温かい雫が伝う。
阿久津は優しく唇を離すと、涙で濡れている奈緒のまつげを切なげに見つめた。
「ごめん……」
両手で頬を包んだまま、親指で涙を拭う。
奈緒は首を横に振って、
「謝らないでください……」
とかすれた声で呟き、阿久津の胸に顔をうずめた。
阿久津はもう一度、奈緒を強く抱きしめた。
「今日は、こうしていたい……」
阿久津の甘い囁きに、奈緒はその腕の中で、静かにうなずいた。
今日は……って、そんなこと、言わないで。
私は……ずっと、がいい。
私はずっと、そばにいたい。
ひっそりと伝わる阿久津の鼓動を、身体中で感じていた。