それでも、愛していいですか。
阿久津はベッドから飛び起きた。
右手で頭を抱える。
「夢か……」
大きく深呼吸した。
この夢を見るのは久しぶりだった。
由美はさよならと言って、手の届かないところへ姿を消してしまう。
そしていつもそこで目が覚めるのだ。
最悪な目覚めだ。
これから一日が始まろうとしているのに、身体が鉛のように重い。
重い足取りで寝室を出てリビングへ行くと、和室の仏壇に目をやった。
妻の由美、そして息子の隼人。
二人の写真を交互に見つめ、小さく「おはよう」と呟いた。
由美の写真を眺めながら、この前このソファで奈緒を抱きしめてキスをしたことを思い出していた。
「……ごめん。耐えられないよな……」
由美の写真から目をそらし、一人呟いた。