それでも、愛していいですか。
金木犀
奈緒はカウンターの後方にあるカップボードにカップを丁寧に戻しながら、昼の出来事を思い出していた。
『久しぶり。俺、春からそちらに行くことになったから。たまには遊んでくれよな』
お気に入りのカフェで親友の加菜を待っていた時、幼なじみの孝太郎からメールが届いた。
高校生活を野球に捧げていた孝太郎は、一浪していたのだが、奈緒の住む町に来ることが決まったということは、この度めでたく難関大のN大学に合格したということだった。
そのことを何気なく加菜に話したら、
『その彼の歓迎会、やりましょう!友達は多い方がいいもの』
という展開になったわけで。