それでも、愛していいですか。
再会
4月。
初々しい一年生たちがキャンパスを明るくしているのを見ると、新しい季節の到来を実感する。
「今日からだね。新しい先生」
研究室への廊下を歩きながら、加菜が言った。
「どんな先生だろうね」
短大でのメインの授業は、やはりゼミだ。
そして就職の相談も、学生課のほかにゼミの先生が担当するので、ゼミの先生がどんな先生なのかはとても重要なことだった。
民法研究室の前に着くと、扉には「阿久津涼介」という名前が掲げてあった。
「あくつ、りょうすけ……」
札に書いてある字面をそのまま口に出して読みながら、まるで俳優みたいな名前だと思った。
ノックをして「失礼します」と扉を開けると、そこには、扉に背を向けて座っている男性が一人いた。
まだ他のゼミ生は来ていない。
「入ってください」
振り向きもせず、パソコンの画面を見つめている。