それでも、愛していいですか。
「えっと……相沢奈緒です。よろしくです」
恥ずかしくてうつむいたままそれだけ言うと、高広は「イェーイ!」と言いながら大げさに拍手した。
そんなに盛り上げなくていいよぉ、恥ずかしいよ。
奈緒は自分の顔が真っ赤になるのがわかった。
その後もひとりひとり順番にテンションの高い自己紹介をし、奈緒から一番遠い席に座っている男性の番になった。
端正な顔立ちのその彼は、落ち着いて、
「佐伯雅哉です。よろしく」
とだけ言うと、にっこり笑った。
奈緒は、その穏やかな雰囲気に思わず惹かれ、雅哉の顔を見つめてしまった。
すると、ふと、目が合ってしまい、とっさに目を逸らせた。
おしゃべりとお酒と料理を楽しんで、宴も中盤にさしかかったころ、席を外していた雅哉が自分の席には戻らず、奈緒の隣りにやってきた。
「どうも。楽しんでる?」
雅哉は優しい笑顔を奈緒に向ける。
じっと見つめるまなざしを奈緒は受け止められなかった。