それでも、愛していいですか。
奈緒は早足で廊下を歩き、加菜の待つ学生食堂へ急いだ。
学食に着いて辺りを見回すと、長身の君島准教授がすぐに目に入った。
君島が学食で一人で食事しているところを、奈緒はほとんど見たことがない。
格好いい君島と話したい学生たちが、いつも彼を囲んでいる。
ふと目先を変えると、加菜が手招きしているのが見えた。
加菜の前に座ったとたん、
「阿久津先生となに話してたの?」
と、さっそく尋ねてきた。
「実はね……」
と切り出し、先日の事故の件の一部始終を加菜に説明すると、さすがに加菜も驚いた様子で。
「なんか、ドラマみたいだねぇ」
「だよね。それで、お礼言ってきたんだ」
「先生、奈緒のこと覚えてたの?」
「うん、覚えてた」
すると。
「運命よ」
「え?」
「だって、身を呈して守ってもらった人に再会するなんて。奇跡じゃない!それにその人が奈緒のことを覚えててくれたなんて」
奈緒もそう思いたかったが、あの冷たい態度と切れ長の目が頭をよぎった。