それでも、愛していいですか。
「ありがとうございます」
奈緒はマグカップを両手で受け取り、少し遠慮気味にソファに腰を下ろした。
阿久津はその隣りに深く腰掛け、静かにホットミルクを口に運ぶ。
そして、マグカップを両手で包んだまま、奈緒の目を見つめ。
「この前は、約束を破って申し訳ありませんでした」
と、頭を下げた。
奈緒は突然の謝罪に驚き、とっさに、
「いえ……」
と言ったものの、ドタキャンの理由が知りたくて、できるだけ冷静に尋ねた。
「どうして、来られなかったんですか?」
すると阿久津は、一度深呼吸をすると、
「それ、置いてください」
と、奈緒にマグカップをテーブルに置くよう言った。
言われたとおりにすると、阿久津は奈緒の手をそっと握り。
「俺は、クリスマスのあの日、君に会いに行くつもりでした。だけど、結局は行けなかった。俺は……俺の人生に君を巻き込むのは酷だと思ったんです。だから、ドタキャンして、君が俺に幻滅すればいい、と思いました」
阿久津は握った手に少し力を入れた。