それでも、愛していいですか。
「顔、赤いよ」
はっと声のした方を見ると、すぐ隣に君島の顔があったので奈緒は一瞬、身を引いてしまった。
「君島先生……いつの間に」
「なんか、おもしろそうなシチュエーション見ちゃったから」
と言って、不敵な笑みを浮かべている。
「よかったね」
君島は腕を組んで、離れたところで穏やかな表情を浮かべている阿久津を眺めた。
「うん……君島先生のおかげだよ」
「そうだろうそうだろう」
君島は何気に奈緒を肩を抱いた。
「ちょ……見られちゃう」
「あーもう、彼氏の視線が気になるぅ~?もう、かわいいなぁ」
君島は奈緒の背中をぽんぽん叩きながら、口を大きく開けて笑った。
相変わらず、この人は……。
「奈緒ちゃん、ますますいい女になったね。卒業おめでとう!」
そう言うと、君島は背を向けたまま手を軽く上げて、学生たちの輪の中に戻っていった。