それでも、愛していいですか。
奈緒は阿久津に言われたとおり、マンションに向かおうとしたが、はかま姿は目立ちすぎると思い、いったん帰宅した。
そして、いつもより少しおしゃれな服を着て、マンションへ向かった。
風はまだ少し冷たい。
ふと、立ち止まり空を見上げると、空は青く、高かった。
空気が澄んでいる。
いつもの公園のブランコが、なぜか懐かしく感じる。
こんなに澄み切った気持ちで、この景色を見るのは初めてかもしれない。
こんなに色鮮やかに見えるのも、初めてかもしれない。
奈緒は、しっかりとした足取りで、阿久津の待つ場所へ向かった。
マンションの入口で、阿久津の部屋番号を押すと、阿久津は「どうぞ」と言ってロックを解除してくれた。
エレベーターに乗りながら、奈緒は家に招かれた理由を考えた。
二人で卒業パーティーとか、いいな。
自分に都合の良い甘い期待をしながら、阿久津の部屋の前まで来ると、一度深呼吸をして、チャイムを押した。