それでも、愛していいですか。
机の上には「公務員試験対策」の問題集。
「就職は地元で」と両親との約束があった。
田舎である地元では、就ける仕事も限られてくる。
地元で働くなら公務員かな、と思った。
公務員なら今勉強している法律のことも、活かせるかもしれない。
しかし、心のどこかに迷いもあった。
これが自分のしたい仕事です、と胸を張って言える自信がないからだ。
夜も更けてきた頃、突然携帯が鳴った。
実家からだった。
深夜の電話に嫌な予感がした。
「もしもし?」
「もしもし?あ、奈緒?ごめんね、こんな夜中に」
母だった。
「ううん。なに?」
「あのね、さっきね、おばあちゃんが亡くなったのよ……」
嫌な予感は的中した。
「そっか」
「明日の晩、通夜だから。明日早めに帰ってらっしゃい」
「わかった」
「じゃあね」
母は用件だけ言って、さっさと受話器を置いた。