それでも、愛していいですか。
二人きり
バイトが終わり、金木犀を出る頃には10時を過ぎていた。
君島の言葉が頭をもたげて、そのまままっすぐ帰る気になれず、住宅街の中にある公園に寄った。
公園の中は、周りのマンションの明かりや街灯で、かなり明るい。
奈緒はブランコに座りながら、缶ジュースを飲んでいた。
まだ中身が残っている缶を地面に置いて、ブランコを漕いでみる。
風をすぅっと切る感じが心地いい。
ブランコを漕ぎながら、君島の言ったことを考えてみるが、見当がつくはずもなく、ただ風を切り続ける。
そういえば。
幼い頃、ブランコに乗るとき、よく祖母に背中押してもらった。
いつも「よいしょ」と掛け声をかけながら背中を押してくれた祖母の声が、ぼんやりと蘇る。
祖母が亡くなってからというもの、涙腺がゆるくなってしまい、祖母のことをなにか思い出すたびに目頭が熱くなった。
ブランコを止めて、缶ジュースを一口飲む。
その時、視線を感じた。