それでも、愛していいですか。
そちらを向いてみると、一人の男性がこちらに向かって歩いてきていた。
足音が響く。
怖くてその場から逃げようかと思ったが、その男性の顔が明かりに照らされた瞬間、驚いた。
阿久津准教授だった。
仕事帰りのようで、スーツ姿で左手には書類がたくさん入っていそうなカバンを持っている。
「こんな時間にこんなところで、なにをしているんですか?」
まるで取り調べのような尋ね方だった。
「えっと……アルバイトの帰りで、その、まっすぐ帰る気になれなくて……それで……」
奈緒はうつむいたまま呟く。
なんとも気まずい沈黙が続いたが。
「大丈夫ですか?」
阿久津の思いがけない優しい言葉で沈黙は破られた。
「え?」
「目が赤い」
泣いていたことがばれてしまい、恥ずかしくて顔を上げられなくなってしまった。
「おばあさんのことを思い出していたのですか?」
「……え?あ、はい。でも、だ、大丈夫です」
奈緒はうつむいたまま、答えた。
また沈黙が流れる。
この空気、緊張する。
すると、突然、