それでも、愛していいですか。
短大での君島は、明るいのに飄々としていて、大人の余裕を感じさせた。
それに加え、モデル並みのルックス。
肩まである髪は軽くウェーブがかかっていて、茶髪。
いつも白いシャツ、黒のパンツ、そして細いグレーのタイをしていた。
35歳には到底見えないし、准教授にも到底見えない。
そんな彼だから、女子学生から絶大な人気を誇っているのだが。
「どうしたんですか?なにかあったんですか?」
19歳の奈緒が、35歳の准教授の話を聞く。
「……れた」
「え?すみません、なんて?」
「だから、振られた!!」
やけくそになって大声で吠えた君島を、店内にいる数人の客がじろりと見た。
「そ、うだったんですか……」
「やってられないよ。信じられる?僕、二股かけられてたんだよ?ったく、あんなやつ、死刑だ死刑」
死刑って。
先生、たしか死刑廃止論者ですよね?
「二股は……ひどいですね」
奈緒はカウンターにへばりついている優秀な刑法研究者を見つめた。