それでも、愛していいですか。
確かに涙を見せてしまったが、そこまで心配されるほどではない。
決して不安定ではないし、バイトのある日はいつもこのくらいの時間に帰宅している。
なぜ、そこまで心配してくれるのだろう。
送ってもらえることは嬉しかったが、頭の中が疑問符だらけになってしまった。
「なにか?」
阿久津はいつもの無表情でこちらを見ている。
わからない。
阿久津准教授という人が、まったくわからない。
「い、いえ。ありがとうございます」
「行きましょう」
「はい……」
奈緒はブランコから立ちあがると、阿久津に促されるまま公園を出た。
住宅街の道は、公園の中とはうってかわって街灯と家の明かりだけで薄暗く、そして人通りもない。
その薄暗い道を、無言のまま二人は歩いた。
たまに車が二人の横を通りすぎていく。
車のヘッドライトがとても眩しかった。
なにを話せばいいのだろう。
この沈黙が息苦しい。
奈緒はこの沈黙を破るために、気づいたことを尋ねてみた。