それでも、愛していいですか。

余計なお世話は結構、これ以上関わらないでくれ。

阿久津の背中がそう言っていた。

阿久津先生はなぜ、これほどまでに人との関わりを避けようとするのだろう。

突き放そうとすればするほど、重大なことを抱えているように思えてならない。

身を呈してまで守ってくれた人。

悲しんでいた私にさりげなく優しい言葉をかけてくれた人。

氷のような無表情の向こう側には、本当は繊細でやわらかい心があるのではないのだろうか。

漠然とだがそんなことを思っていたら、言葉がこぼれていた。

「……心配です」

「ん?」

「先生、辛そうだから……」

その言葉に阿久津の眉が一瞬ぴくりと動いた。

「君は勉学に励んでいればいい」

「……学生は、先生の心配をしちゃいけないんですか?」

すると、阿久津は奈緒にすっと歩み寄った。

思わず後ずさりしてしまいそうになった。

そして、氷のまなざしを向け。

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