それでも、愛していいですか。

……まさか。

そんなはずはない、と思いながらも途端に不安になった。

秘密を聞いてしまった私は、どうなるのだろう?

奈緒はがばりと起き上がり、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して一気に飲み干した。

そして、とりあえず落ち着こうと、テレビをつけた。

膝を抱えてワイドショーを眺める。

しかし、ちっとも頭に入ってこなかった。

阿久津先生には、なにがあったのだろう。

こんなことでは、ますます勉強に集中なんてできない。

ため息が止まらなかった。

食欲も湧かず、ただぼんやりと時間だけが過ぎていった。

ただついているだけのテレビは、再放送のドラマが流れている。

その時、部屋のチャイムが鳴った。

こんな時に。

誰にも会いたくなくて居留守を使おうと腰を上げずにいると。

「奈緒?いる?俺」

と、外で叫んでいる孝太郎の声が聞こえた。

奈緒は大きなため息をついて重い腰を上げると、ゆっくりと玄関の戸を開けた。

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