それでも、愛していいですか。
「ハタチの誕生日、おめでとー!よっ、大人!」
孝太郎は満面の笑みだった。
奈緒とは真逆のテンション。
「あ、そっか……今日、私、誕生日だったんだ」
「どうしたんだ、お前。なんかあったのか?」
「ううん、別に」
「ほら、これ、プレゼント。お前の好きなチョコレート」
孝太郎は、チョコレートがいっぱい詰まった袋を、奈緒の顔の前にかざした。
「ありがと……」
力なく笑うと。
「どうした?」
真剣な口ぶりで、奈緒をまっすぐ見つめる。
「……なんでもない」
奈緒のそっけない返事に、
「なんでもないってことはないだろ。気になるだろうが」
と孝太郎が少し声を荒げたので、奈緒は、
「孝太郎がそこまで心配することじゃない!」
と言って玄関の戸を閉めようとした。
すると、孝太郎は力ずくでそれを阻止し、無理矢理玄関に入り込んで奈緒の腕をつかんだ。
そして、奈緒を自分の方へ引き寄せ、思いきり抱きしめた。
なにが起こったのか理解できなかった奈緒は固まってしまった。