それでも、愛していいですか。
「あ、そうだ。奈緒ちゃん」
「なんですか?」
「4月から来る新しい民法の先生、今日学校で会ったよ」
今まで民法を担当していた先生は教授に昇格し、別の大学へ転出するため、4月からは新しい民法の先生が来ることになっていた。
「どんな感じの先生でしたか?」
民法ゼミの奈緒にとっては、とても重要なことだ。
「なかなかの男前だったよ。僕と同い年くらいじゃないかな」
「へぇ」
君島が認める男前に、奈緒の期待値はぐんと上がった。
「でも、ペラペラしゃべるようなタイプじゃないと思う。いや、むしろ無口だな、あれは」
その言葉に奈緒は思わずくすりと笑ってしまった。
おそらく君島とは対極にいる人なんだろう。
「なに?僕、なにかおかしなこと言った?」
君島はきょとんとした顔を奈緒に向ける。
「ううん、なんでもない」
「なんだよぉ」
君島は少しふてくされた顔をしてみせ、煎れたてのカフェオレを口にすると、「あちちっ」と言って、舌をぺろっと出した。