それでも、愛していいですか。
長い沈黙のあと。
「この前、由美の三回忌が終わりました」
そう言って、阿久津は目を伏せた。
「そうでしたか。もう三回忌ですか」
「……ええ」
「早いですね、時間が流れるのは」
「そうですね」
阿久津は頬杖をついて、目を伏せたまま、
「三回忌の時、由美の妹に言われました。私が前進しないと由美が悲しむと」
マスターには由美の妹、美咲が言ったその言葉の意味がよくわかった。
久しぶりに見た阿久津は、以前とは空気がまるで違っていた。
苦悩が全身からにじみ出ている。
「それで、ここへ?」
マスターがそう言うと、
「ええ。とりあえずここからかな、と思って」
阿久津はそう言って、甘いコーヒーを一口飲んだ。
「阿久津くん」
「はい」
「この前ちらっと来た時、奈緒ちゃんを見て驚きませんでしたか?」
マスターは優しく尋ねた。
「……ええ。ドキッとしました」