それでも、愛していいですか。
「でしょう。奈緒ちゃん、雰囲気がそっくりですよね、由美ちゃんと」
「ええ」
「顔は全然似ていないのに、こんなに雰囲気が似てる人がいるんだと、奈緒ちゃんを初めて見たとき思いました。だから、彼女が面接に来た時、迷わず採用してしまいましたよ」
マスターは目を細めた。
阿久津はマスターの話を聞きながら、先日、奈緒に冷たく言い放ったことを思い出していた。
学生相手にあそこまで言う必要はなかったと自責の念に駆られるのと同時に、自分の大人気なさを恥じていた。
「彼女には……この前、ひどい言い方をしてしまいました」
阿久津は懺悔(ざんげ)するように呟いた。
実は、戸惑っていた。
ずっと閉ざしていた心の中に、まっすぐ切りこんで来た奈緒に。
曇りのない目で自分のことをまっすぐ見つめ、自分のことを真剣に心配している彼女に。
どう対処していいのか、わからなかった。
そんな自分がまた、情けなかった。