それでも、愛していいですか。
片思い
毎日暑い日が続く中、前期の試験も終了し、夏休みに突入していた。
公務員試験がおよそ一ヶ月後に迫っていた奈緒は、本腰を入れて勉強するために短大の図書室に缶詰になっていた。
たまに、勉強に疲れて図書室にある本を手に取ってしまい、少しの気分転換のつもりがどっぷり本の世界にはまってしまうこともあったが、それでも家にいるよりは勉強がはかどった。
今日も短大からいつものように帰宅すると、アパートの前でちょうど帰宅した孝太郎に出くわした。
「おかえり」
孝太郎は笑顔だ。
このさわやかな笑顔が、奈緒は好きだった。
しかし、告白されたあの日から、この笑顔が胸を苦しくさせていた。