お猫様の言うとおり

父さんは、決して冷たい人間ではない。


不器用だが、優しい人だ。

大人になればなるほど、表面に出ていなかったそういう部分が、感じとれるようになった。



ため息をついた僕の膝に、クロは座って、僕を見上げていた。

“心配でもしているかのように”というのは、僕の過信かもしれない。



でも聞いているかもしれないと思って、クロに皮肉ったように笑いかけた。


「あのね、クロ、今日は僕の誕生日なんだ。」





< 12 / 42 >

この作品をシェア

pagetop