お猫様の言うとおり
三章:トオコ(p15-
この頃、クロの行動に変化が出てきた。
まぁ、気まぐれの代名詞ともなる猫が、一定の行動しか取らない方が、おかしいのだけど。
暖かい陽気の昼だった。
腹の上のクロは、尻尾だけを動かして、僕をジッと見上げている。
「昨日行った店は、何回も行っていてね、その店のデミグラスソースは絶品なんだ。」
僕も、最近頭がおかしくなったのかもしれない。
他のどの人間にもしなかったような、好きな食べ物の話を、理解できてるかも分からない、
猫に話している。
「ふっ…、バカみたいだね。」
その事に気づくと、大概バカバカしくなって笑うんだ。
人に懐かない僕が、ずいぶんと、猫に懐いたものだ
と。