お猫様の言うとおり
まどろんで、少しずつ遠くなる風の音。
その中で、風の調子を乱す一つの音で、僕の意識は引き戻された。
草を踏みつけて、こちらへ近づいてくるような気配を背後に感じた。
―誰か来た?―
警戒をするけれど、なにぶん太い木のちょうど裏側で、少し離れた所にいるらしく、その存在はひどくおぼろげだ。
―邪魔されたくないな…―
と思って、息を潜めた。
「ん?」
突然、膝の上にいたクロが、何かに気づいたように起き上がった。
そして、嬉しそうに一声鳴いて、弱々しいくせに心なしか普段よりも足早に、背後にいるであろう何かの元へ駆けていった。