お猫様の言うとおり
「あら、ネコちゃんこんにちは、また会ったね。」
聞こえたのは、優しそうな女の声だった。
「浮気か、クロめ…。」
その女の姿を見ようと、ほんの少し身を乗り出した。
顔はよく見えないけど、年若い、でも生徒ではないのか、ワンピース姿の女の人だった。
「なんで学校の敷地に…。」
“また”ということは、何度も訪れていてクロも見知っているようだ。
―まぁ、どうでもいいけど。―
自分の邪魔をしなければいいやと、また木陰に隠れようとした時、
「ニャウ、ミャー。」
と、クロの声がした。
「いい子、いい子ね…。」
クロは、その女の人に、やさしく撫でられていた。
「っ…。」
僕はそのまま、彼女が帰るまで木に寄りかかっていた。
不思議と、胸がざわついて、動けなかったんだ。