お猫様の言うとおり
優しい女の声と、細いクロの鳴き声。

それを聞いていると、胸がキュウッと締め付けられるような気持ちになった。

苦しいはずなのに、とても懐かしいような気持ちで、僕は放課後、ここへ来ることをやめようとは思わなかった。




「トオコさーん、もう戻る時間よー!」


風の切れ間から誰かを呼ぶ女の人の声が聞こえた。


「はーい!じゃあ、またね、クロちゃん。」

その声に返事をしたのは、紛れもなく木の裏にいる彼女で、そのまま木々の中へ走りさっていった。


「“トオコ”…。」


―それが彼女の名前なのか?―

確かめるように呟いて、戻ってきたクロを抱き上げた。


「ミャー。」

返事をしたように思えて、クスッと笑った。



「どんな話をしていたの?ねぇ、教えて…?」












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