お猫様の言うとおり
「生徒名簿と写真なんて広げて…何してるの?」
放課後の生徒会室で黙々と作業している僕の横に立ち、康介は不思議そうに覗き込んだ。
「…ねぇ康介、“トオコ”って言ったら、きっと下の名前だよね?」
ボソッと独り言の様に尋ねると、
「はぁ?」
と、彼はずいぶんと間抜けな表情をした。
「探してるの?その“トオコ”さんって人を。」
そう言って、同じく名簿をチェックし始めた。
どうやら手伝ってくれるようだ。
「ちょっと気になるだけ。」
付け加えるように言うと、康介は楽しそうに笑った。
「そっか、“気になる”んだ。」
「何笑ってるの?」
何か笑う要素でもあっただろうか。
「ううん、別に。」
口を押さえてニヤけている弟に、
「気持ち悪い。」
と非難しながら“トオコ”という女を探した。